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第5話 会社では…

last update Last Updated: 2025-09-21 06:02:00

翌日、いつも通りに出社。

エントランスを通って、1階のエレベーター前に

行くと、後ろから律樹が、

「佐藤さん、おはよう!」と言った。

「あ、課長! おはようございます」と何もなかったかのように自然に挨拶をする。

でも律樹は、ニコニコしている。

周りにも人が続々と出社して来ている。

──あまりニコニコしちゃダメじゃない!

バレちゃうよ!

と私は思ってしまったが、気にし過ぎかな……

エレベーターに乗り込む。

エレベーターは、数台あるが、

朝は、いつものことながら大勢の社員さんが乗り込むので、わりと満員になる。

律樹は、私を安全な奥の角へと行かせてくれた。

と、思ったら……

まるでテレビドラマのように、顔色ひとつ変えずに、スッと自然に恋人繋ぎで手を繋いだのだ。

「!!!」

私も顔に出さないようにしなきゃ!

と思いながらも、ニヤッと一瞬口角が上がってしまった。

上を向いて、階数を知らせる数字を見ながら誤魔化す。

皆んな前を向いて乗っているのだから、誰も見ていない。

途中の階で、降りられる方もいらっしゃるので、

隙間が出来ると、誰かに見つかってしまいそう。

ドキドキしていたが、律樹は手を離そうとしない。

自分のカラダを斜めにして、見えないように上手く隠しているようだ。

そして、いよいよ私たちが降りる階だ。

ギリギリまで手を離さない律樹。

私は、ドキドキしていると、

今乗っている方々は、皆同じ5階で降りられるようで、私たちが1番最後だった。

なので、エレベーターの横壁にあるドアの開くボタンを私が片手で押しながら、

「どうぞ」と、他の方に先に降りていただくと、

結局最後まで手を離さないで、エレベーターを降りる時に、ようやく離した律樹。

チラッと目を見ると、

ニコッとした。

──う〜ん! もう〜! 会社では止めてよね

ドキドキして心臓が持たないわよ〜

ったく! 後でメッセージを送っておこう!

「おはようございます」

「「おはようございます」」と、皆さんに挨拶をする。

長岡さんにも、「おはようございます」と挨拶する。

「おはよう! みありちゃん、課長と一緒だったの?」と聞かれて、

「あ、エレベーターで一緒に……」

──手を繋いで乗っていた! とは言えない。

「体調はどう? 昨日は良く眠れた?」と聞かれた。

──今は、また違う意味でドキドキしてますが……とも言えない。

「はい! ありがとうございます。おかげ様で元気になりました!」と言うと、

「良かった〜! みありちゃんの··がいつもと違うと調子狂っちゃうから〜」と言われた。

「あはっ」と、笑っておこう。

そして、いつものように事務仕事を熟す。

私は、工事部の社員さんの出張旅費精算を主にしているので、3課の分け隔てなく部内全ての課の社員さんと関わりがあるのだ。

出張の少ない社員さんは、少なくて助かるがほぼ毎日出掛けている社員さんがほとんどだ。

課長クラスの管理職になると、繁忙期以外は、内勤の方が多くなる。

なので、律樹も課長で転勤して来たので、わりと部内で会えるのだ。

かと言って、律樹を見つめる時は、目からハートが出ないように注意しなければいけない。

しかし、どうも、

仕事の合間に、つい無意識に、律樹の席の方を見つめてしまっているようだ。

それを長岡さんは、見逃さない!

ボーっとしている私の視界に入って来て、

「みありちゃん?」と、

「え、あ〜はい!」と言うと、

「もしかして〜やっぱり、みありちゃんも塩谷課長推し?」と聞かれた。

──どうしよう! ココは、正直に合わせておいた方が良いのだろうか……

「あ〜そうですね……」と言っておこう。

「ふふ、やっぱり? そうよね〜だって、さっきから、みありちゃんの目からハートがビュンビュン飛んでるもの〜」と笑われた。

「え?」

私は、とても恥ずかしくなってしまった。

──嘘でしょう? そんなに?

無意識って怖いなと思った。しかし、長岡さん、よく見てるなあ〜

「大丈夫よ! 誰にも言わないから」と、言いながらニコニコされている長岡さん。

そして、

「分かるわ〜ジッと見つめてしまうほど、イケメンよね〜」と、おっしゃった。

「ハア〜〜」と、私は引き攣った顔で笑っていた。

しばらくすると、10時から10分の休憩になった。

すると、何処かから噂を聞いて来たのか、他の部署の女性社員たちが次々と来た。

「あ、あの人ね、新しく来たイケメン課長って!」と言う声がした。

「うわ〜ホント! 凄いイケメンね!」と言っているのが聞こえた。

それは、どうみても律樹の方を見ている。

長岡さんが、

「ほら、やっぱり塩谷課長、凄い人気ね」とおっしゃる。

「ですね……」と言ったものの、一気に不安が襲いかかって来た。

すると、若くて行動力のある女性2人が、ズカズカと私たちの部署に入って来て、律樹の元へと向かった。

──えっ? 凄っ!

私は、呆気にとられていた。

そして、

「あの〜塩谷課長〜!」と、律樹に声を掛けた。

「はい!」

と何の疑いもなく律樹が返事をすると、

いきなり、その女性たちが、

「塩谷課長は、今お付き合いされている彼女さんとかいらっしゃるんですか?」と、堂々と聞いた。

そして、2人でキャッキャと言っている。

休憩時間だとは言え、ココは会社だ。

今、堂々とそれを聞いてしまうんだ!

しかも、違う部署で! と私はとても驚いた。

すると、律樹は、

「ハハッ! 君たち休憩中とは言え、凄いことを聞いて来るね〜」

と、同じことを思ったようで、

笑いながらも突っ込んでいる。

「10分休憩に急いで来ました」と悪びれることもなく言っている。

──そうじゃない!

そして、

「それを聞いてどうするの?」と、律樹は聞き返した。

「あ、彼女さんがいらっしゃらないなら、私たちにもチャンスがあるのかなあ〜と……」と言うのを聞いて、

「ごめん! ない!」と律樹は即答した。

「「えっ?」」

律樹があまりにもハッキリと言うものだから、その若い女性たちは驚いている。

そして、

「そもそも、君たち誰? 俺は君たちを知らない! 先に自分たちが何者かも名乗らないで、興味も何もないでしょう? それに、少なくとも、俺は会社の休憩時間に、いきなりそんなことを聞いて来る女性と付き合うつもりはない!」

と、言った。

呆気に取られている女性たちに、更に……

「あっ! ついでに言うと、俺、···が居るから! ごめんね」と最後は優しく笑いながら言った。

──!!!

「そ、そうなんですね。分かりました。失礼しました」と、その2人組は、そそくさと出て行き、

他にも居た女性たちに、

「あ、無理無理! 婚約者が居るんだって!」と言ったかと思ったら、

「しかも、感じ悪っ!」と言っていた。

すると、長岡さんがすかさず、

「塩谷課長、婚約者さんが居るんだって〜」と私に言った。

「あ、ハハそうみたいですね」

──も、もしやそれって……?

「せっかく、みありちゃん! 今日は元気になったのにね〜」

と、また私が落ち込んでいると思って、慰めていただいてるようだ。

「しかし、あの子たちホント常識が無いわね〜まるで男漁りに来てるみたい! 課長が怒るのも無理もないわよね」と。

「ええ……」

更に、

「塩谷課長の婚約者さんって、どんな女性かしら〜? きっと素敵な女性よね、お会いしてみたいわ〜」とおっしゃった。

もし、昨日の律樹の言葉が嘘じゃなければ、

それって……私のことを言ってくれたの?

と、嬉しくなった。

──でも、『感じ悪っ!』とも言われてたけど、良いのかなあ? 律樹。

また、チラッと律樹の方を見てしまった。

一瞬ニコッと笑った。

すると、

「ヤダ〜今、塩谷課長がこっちを向いてニコッと笑ってくれた」と、

たまたま私と同時に律樹の笑顔を受け取ってしまった長岡さんが喜んでいる。

「ふふ、そうなんだ! 良かったですね」と思わず言ってしまった。

──どうしよう、長岡さんには本当のことを話すべきか……

後になればなるほど、言い辛くなってしまう。

言っても良いか、律樹に相談してみなきゃ。

〈あのう〜後で良いので、仕事以外のことで、ちょっとご相談が……〉

とメッセージを送ると、

〈分かった!〉とすぐに返信が来た。

すると、すぐさま私の方へ歩いて来て、

「佐藤さん! ちょっと今良いかな? 精算のことで教えてもらいたいことがあるんですが、会議室へ!」と……

「!!! ……あ、はい……」

──誰が今って言ったのよ? 後で、仕事以外って言ってるのに……

さっきの女性たちには、休憩時間に! って怒ってたくせに、もう休憩時間は、終わったわよ?

と思いながら、呼ばれたのに行かないのも変だし……そこら辺の資料を適当に集めてダミーとして手に持った。

「みありちゃん! ファイト!」と言ってくれる長岡さん。

──あ〜早く本当のことを言いたい!

そして、会議室へと入ると、

またもや律樹は、すぐに鍵をかけて、ブラインドを閉めた。

「だ・か・ら……!」と言うも、

「この方が話し易いからな」と、笑っている。

「公私混同! 今じゃなくて良かったのに!」と言うと、

「いいじゃん! で、どうした?」と近づいて来る。

「ふふ」と、思わず後退りする。

「何で逃げるんだよ!」と笑っている。

「だって……」と笑う。

「分かったよ! で、どうした?」と律樹は、机に軽く腰掛けながら聞いてくれた。

「あのね……」と、長岡さんのことを話すと……

「なるほどね〜良いんじゃない? ホントのことを言えば」と言ってくれた。

「良いの?」と聞くと、

「もちろん! 事実だし! なんなら俺は今すぐにでも皆んなに言いたいぐらいだよ」と言った。

「ダメだよ! 島田さん以外にも知られると困るでしょ」と言うと、

「まあ、俺は親にいつバレても良いけどな」

と言う。

そして、さっきの女性たちのことも話し、

···って……?」と聞くと、

「もちろん、みありのことだからな!」と言われた。

きゅんとして、やっぱり嬉しかった。

「あ! その代わり、もうホントに一緒に住もうよ!」と交換条件を出して来た。

「え〜? 会社から遠くなるし……」と言うと、

「う〜ん、じゃあ平日は、みありん家にするか?」と言い出した。

「は〜? まあ、その話は又ゆっくり話そう!

じゃあ仕事中だし、後でお昼休みに長岡さんには、話すね」と言うと、

「うん、分かった!」と、妙に素直だなと思ったら、

黙って両手を広げている。

「ん? 何?」と聞くと、

「ハグ!」と言う。

仕方がない! お願い事をしたのは私の方だから、

と、ハグされに行くと……

「う〜ん! みあり〜」と、ハグしたまま頭をヨシヨシされる。

──会社でこんなことをしても良いのかしら?

そして、私が離れる時に不意打ちのキスをされた!

「あっ!」

「ふふ〜」と笑っている。

「もう! それは反則!」と言うと、

「お礼としてもらっておく〜」と、笑っている。

そのまま出ようとするので、

「あ、待って、口紅が付いたかも」と、律樹の唇を持っていたティッシュで拭うと、黙って、もう一度キスをした。

「もう!」

「ふふ」と笑っている。

そして、唇を尖らせて突き出し、『拭いて!』と言っている。

「ふふふふ」

まるで、子どもみたいだ。

でも、思わず、

──可愛い

と思ってしまっている私が居る。

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